大阪地方裁判所 平成5年(わ)486号 判決 1993年9月10日
本店所在地
大阪市西区西本町三丁目一番一号
株式会社
ツダ商運
右代表者代表取締役
津田実津公
本籍
香川県観音寺市伊吹町八五二番地
住居
大阪府高石市綾園三丁目四番一八号
会社役員
津田利夫
昭和六年三月一日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官熊谷保出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社ツダ商運を罰金二〇〇〇万円に、被告人津田利夫を懲役一年にそれぞれ処する。
被告人津田利夫に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社ツダ商運(以下、「被告会社」という)は、大阪市西区西本町三丁目一番一号に本店を置き、海上運送業等を目的とする資本金三〇〇〇万円の株式会社であり、被告人津田利夫(以下、「被告人」という)は、昭和五五年から平成四年五月二二日辞任するまで、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していた者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、
第一 別紙修正損益計算書(一)記載のとおり、昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が三九四九万四二四五円であったのに、売上の一部を除外し、架空の経費を計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成元年七月三一日、大阪市西区川口二丁目七番九号所在の所轄西税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が四七二万一〇四三円で、これに対する法人税額が一三二万四七〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額一五五三万五九〇〇円と右申告税額との差額一四二一万一二〇〇円を免れ、
第二 別紙修正損益計算書(二)記載のとおり、平成元年六月一日から平成二年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一億六七五五万二一六四円であったのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成二年七月二七日、前記所轄西税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一九四六万一二七五円で、これに対する法人税額が六七四万九一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額六五九八万五五〇〇円と右申告税額との差額五九二三万六四〇〇円を免れ、
第三 別紙修正損益計算書(三)記載のとおり、平成二年六月一日から平成三年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が六八五六万七八一四円であったのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成三年七月二九日、前記所轄西税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二〇九八万〇八七八円で、これに対する法人税額が六七二万五五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額二四五七万〇六〇〇円と右申告税額との差額一七八四万五一〇〇円を免れた。
(証拠の標目)
注・以下において、証拠中、末尾の括弧内に記載した漢数字は、証拠等関係カード(請求者等検察官)の証拠請求番号を示している。
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通(二八、二九)
一 五十嵐一見の検察官に対する供述調書(二五)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書七通(調査書類名売上除外金額その2(一一)、記録第二五-二〇号(一二)、記録第二五-六号(一九)、記録第二五-八号(二一)、記録第二五-一一号(二二)、記録第二五-三一号(二三)、調査書類名未納事業税(二四))
一 登記官橋本敦各認証の登記簿謄本(三一)、閉鎖役員欄用紙謄本二通(三二、三三)
一 被告会社作成の証明書(三四)
一 検察事務官作成の報告書(九)
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の証明書二通(平成元年七月三一日に申告した確定申告書写についてのもの、平成三年三月二八日に申告した昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までの事業年度の修正申告書写についてのもの)(四、五)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が昭和六三年六月一日から平成元年五月三一日までのもの)(一)
判示第二及び第三の各事実について
一 大蔵事務官作成の査察官調査書三通(記録第二五-三号(一四)、調査書類名架空修繕費その2(一五)、記録第二五-七号(二〇))
判示第二の事実について
一 被告会社代表者津田実津公の検察官に対する供述調書(二七)
一 岡部英文の検察官に対する供述調書(二六)
一 大蔵事務官作成の査察官調査書二通(調査書類名売上除外の額から相殺された簿外修繕の額(一六)、記録第二五-一〇号(一七))
一 大蔵事務官作成の証明書二通(平成二年七月二七日に申告した確定申告書写についてのもの、平成三年三月二八日に申告した平成元年六月一日から平成二年五月三一日までの事業年度の修正申告書写についてのもの)(六、七)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が平成元年六月一日から平成二年五月三一日までのもの)(二)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の証明書(平成三年七月二九日に申告した確定申告書写についてのもの)(八)
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が平成二年六月一日から平成三年五月三一日までのもの)(三)
(法令の適用)
罰条
被告会社 判示各罪についていずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(いずれも情状により、罰金はその免れた法人税額に相当する金額以下)
被告人 判示各罪についていずれも法人税法一五九条一項
刑種の先覚 被告人の判示各罪についていずれも所定刑中懲役刑を選択
併合罪の処理
被告会社 刑法四五条前段、四八条二項(判示各罪の罰金額を合算)
被告人 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)
主刑 被告会社を罰金二〇〇〇万円、被告人を懲役一年
刑の執行猶予 刑法二五条一項(被告人に対し三年間猶予)
(量刑の理由)
本件は、埋立土砂の海上運送を主たる営業目的とする被告会社の設立直後からの代表者で、業務全般を統括していた被告人において、被告会社の昭和六三年六月から平成三年五月までの三事業年度に合計二億七五六一万円余の所得がありながら、うち二億三〇四五万円余の所得を秘匿して過少申告し、法人税合計九一二九万円余を脱税した犯行で、脱税額も少なくなく、ほ脱率も約八六パーセントと相当高率の事案である。そして、脱税の動機は、事業拡大や業績悪化に備えての簿外資産を蓄えるためであったものの、その所得の秘匿方法は、例えば、修繕費については、取引先に依頼して虚偽の請求書を作成させたうえ交付した手形を取り立てさせ、現金を返還させるなどの悪質な手段によるものもあり、また、平成三年三月には、税務署の税務調査によりいったん修正申告をしたが、一部所得の修正申告にとどまり、かつ、その後においても、やはり所得を秘匿して虚偽の申告をするに至っているもので、以上の点などからすると、被告人及び被告会社の刑責は決して軽くない。
しかし、他方、脱税の目的は、前記のとおり被告人自身の個人利得を図ったものではなく、被告人において、本件発覚後、事実関係を認め、また、代表取締役を辞任するなど、その責任を自覚し、十分に反省していること、被告会社においては、本件ほ脱にかかる法人税本税、重加算税、延滞税のほか、地方税のすべての納付を既に終えていることなど、それぞれしん酌すべき事情もある。
そこで、これら諸般の事情を総合考慮し、被告会社及び被告人をそれぞれ主文掲記の刑に処したうえ、被告人に対してはその刑の執行を猶予することにした。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 竹田隆)
修正損益計算書(一)
<省略>
修正損益計算書(二)
<省略>
修正損益計算書(三)
<省略>
税額計算書
<省略>